「学校のお泊まり行事って、うちの子も行けるのかな…」そんな不安を抱く保護者の方は少なくありません。特別支援学級に在籍する子どもにとって、修学旅行や林間学校のような宿泊行事は大きなイベントです。楽しみである一方、集団行動や環境の変化に不安を感じることもあります。
この記事では、宿泊行事に参加するときの準備や学校の対応について整理しつつ、実際に私が担任として経験したことも踏まえて、保護者の方に少しでも安心していただける内容をお届けします。
宿泊行事でよくある保護者の不安
特別支援学級の子どもが修学旅行や林間学校に参加する際、保護者からよく聞かれるのは次のような声です。
- バスや電車で落ち着いていられるだろうか
- 食事やトイレに対応してもらえるだろうか
- 集団行動から外れてしまわないか
- 夜、眠れなかったらどうしよう
- 他の子や先生に迷惑をかけてしまわないか
こうした不安は自然なことで、多くの保護者が同じように感じています。
不安は面談等でしっかり伝えよう
多くの学校では、特別支援学級の子どもが安心して参加できるよう、事前に保護者との情報交換をしっかりと行います。
保護者の不安を把握した上で、どのような支援が可能かを校内で話し合い、共有しています。
全てを完璧に対応できるわけではありませんが、学校はできる限りの配慮をしてくれます。
たとえば;
- 担任が班別行動にも入り、付き添う
- 外食でのアレルギーの管理や偏食対応
- 夜間の声掛け
- 活動への参加方法の工夫(班行動・お風呂・日帰り対応など)
保護者が不安に感じる点は、学校もあらかじめ想定して準備しています。気になることがあれば、事前にしっかり相談しておくと安心です。
担任エピソード
ここでは実際に、私が担任していた子が宿泊行事へ参加した時のことを紹介します。
Sくん→林間学校・初めての宿泊行事
【保護者の不安】
・班活動で友達と喧嘩にならないか
・いつもの枕や人形がなくて夜眠れるか
・ キャンプファイヤーの仕事をやりきれるか
・山を登り切れるか
Sくんは、初めての宿泊行事でしたが、事前学習で、キャンプファイヤーの仕事や班活動での役割の練習を重ね、見通しを持つことで当日は落ち着いて行動できました。
夜は、起きてしまいましたが、声がけで安心し、翌朝も元気に迎えられました。
山登りやカレー作りを通して友達と関わる機会も多く、通常学級の友達と仲を深めることができました。
Wくん →修学旅行・2回目の宿泊行事
【保護者の不安】
・母親と離れて夜寝られるか
・活動中に癇癪を起こさないか
・体力は持つか
Wくんは2回目の宿泊行事でした。林間学校では、お母さんと離れることが寂しくなってしまい、日帰り対応をしました。
修学旅行では、お泊まりの練習をしていたこともあり、友達と一緒の布団で寝ることで朝を迎えることができました。
事前の打ち合わせで、21:00までに泊まれるか判断をして、保護者に連絡をするという対応をとりました。
体力の心配もありましたが、班行動から私と適宜離れて休憩をするなどすることで、2日間とも通常学級の友達と同じように行動できました。
出発前は「行きたくない。」だったのが、学校へ帰ると「もう一回行きたい。」に変わるほど、楽しい思い出となりました。
Rさん →修学旅行・2回目の宿泊行事
【保護者の不安】
・不安で動けなくならないか
・トイレがうまくできるか
・外食ができるか
・みんなとお風呂に入れるか
Rさんは、Wくんと同様、私と2回目の宿泊行事でした。
不安感がとても強いため、私がほとんど付きっきりで行動をしましたが、班行動等は通常学級の友達と一緒に行うことができました。
トイレにもこだわりがあるため、携帯用トイレを持参しました。
また、偏食があるので、お弁当対応をしました。外食では、食べられるものだけ挑戦しました。
心配していたお風呂は友達と楽しく入ることができ、達成感を味わうことができていました。
夜は、保護者と別のホテルに泊まり、次の日の朝一に合流するという形をとりました。
色々な対応をとりましたが、事前に保護者と打ち合わせを重ねることで、無事に修学旅行を終えることができました。
修学旅行に参加できたことは、本人の自信につながったようです。
宿泊行事に参加することの意義
修学旅行や林間学校を経験することで、子どもには多くの「成長のきっかけ」が生まれます。
- 自分でできることが増える
- 友達や先生と協力する経験ができる
- 家族と離れて過ごすことで自信につながる
- 「楽しかった」という思い出や達成感が心に残る
宿泊行事は、単なる学校行事ではなく、子どもにとって大切な人生の1ページになります。
保護者の方へ
不安を感じるのは当然のことです。しかし、学校も万全の準備をしてくれますし、子ども自身も新しい環境で成長する力を持っています。
「送り出すのが心配…」という気持ちと同じくらい、「子どもに経験させてあげたい」という思いもあるのではないでしょうか。
宿泊行事は、特別支援学級の子どもにとってもきっとかけがえのない体験になります。
まとめ
大きな不安がある宿泊行事ですが、普段の学校生活では絶対に得られない経験や学びがあります。
宿泊行事を終えた子どもたちは、親元を離れ、大きなことを成し遂げた達成感や自信を得て、一回り成長した姿を見せてくれます。
ぜひ事前に学校と相談して、なるべく不安を取り除きながら、安心して子どもを送り出してあげてください。