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IQが低い=支援学級?現役教員が見ている“本当の判断ポイント”とは

「うちの子、IQが低いみたいです。特別支援学級に入ったほうがいいんでしょうか?」

「普通に勉強できているのに、支援学級を勧められて……入ったほうがいいんでしょうか?」

就学相談の面談で、保護者の方からよく聞かれる質問です。

特に、IQがボーダーライン(いわゆる“グレーゾーン”)と呼ばれるお子さんをもつ保護者の方は、

「本当にうちの子が対象なの?」
「勉強はできているけど、他に何か理由があるの?」

と、戸惑いながら相談に来られることが少なくありません。

今回は、特別支援学級の対象になるかどうかを判断する際に、学校がどんな視点で見ているのか。
検査結果はどう活用されるのか。
そして、なぜIQだけでは判断できないのか。

担任として、また特別支援コーディネーターとしての現場経験をもとにお伝えしていきます。


目次

1|支援学級の対象は「IQが低い子」だけじゃない

支援学級の対象についてネットなどで調べると、

  • IQ70未満 → 知的障害学級の対象
  • IQ70〜85 → 境界域(グレーゾーン)

このような情報が出てきます。

もちろん、発達検査でIQを測定することで、判断材料の一つにはなります。

でも、学校現場では「IQの数値だけで判断することはほとんどない」のが実情です。

実際に、IQが高めでも支援学級で過ごす子がいますし、逆にIQが低めでも通常学級で頑張っている子もいます。

IQはあくまで「参考のひとつ」でしかありません。

検査は、支援学級に入るかどうかの判断のためではなく、その子の課題を知り、その子に合った支援やサポートを考えるために行うのです。


2|学校が見ているのは「集団生活への適応」

それでは、学校側はどんな視点でお子さんを見ているのでしょうか?

一番大きなポイントは、

「集団の中で、安心して学び・生活できるか」

です。

たとえば、こんな様子がある場合には、学校として支援の必要性を検討します。

  • 一斉指示が通らず、本人が困っている
  • 授業のペースについていけず混乱してしまう
  • 気持ちの切り替えが難しく、癇癪になることが多い
  • 周囲の友達とうまく関われず、トラブルになりやすい
  • 指名されたとき、極端に緊張してしまい固まってしまう

これらの状態が一時的なものではなく、**「日常的に見られ、本人にとって負担が大きくなっている」**という場合は、
個別での支援や少人数の環境が必要ではないか、と判断されることがあります。


3|実際にはこんな子もいます

これまで担任やコーディネーターとして関わってきた子どもたちの例を、少しご紹介します。

▶ Aくんのケース

IQは80程度で、暗算も速く、音読もスラスラ。勉強の面だけを見れば、通常級で問題ないように見えます。

でも、軽度の自閉症傾向があり、集団の中での学びや友達とのやりとりに大きな困り感がありました。

支援学級では、ゆっくりとペースを調整しながら、自分のペースで学ぶことができています。

中学校は特別支援学校へ進学しました。


▶ Bさんのケース

IQは70で、学習面はかなり厳しい印象でした。

でも、コミュニケーション能力が高く、友達の輪の中で自然にリーダー的な立場に立てる子。

「学習面は家庭と習い事で補ってみたい」との保護者の希望もあり、通常学級での生活を選択しました。

支援学級が必要かどうかは、「その子の得意・不得意」や「どこで安心して過ごせるか」によって異なるのです。


4|就学相談の流れ(年長児の場合)

「支援学級を勧められた」と聞くと、突然のことのように感じるかもしれません。

でも、実際には以下のような段階を踏んで、慎重に判断がされています。


園から小学校への就学前の例

  1. 保護者・園からの相談
     → 発達の様子や困りごとを共有
  2. 教育センターや心理士との面談、発達検査(WISCなど)
     → 必要に応じて観察・行動チェックも実施
  3. 教育委員会主催の就学相談・判定会議
     → 学校・医師・心理士など専門家による協議
  4. 保護者へ提案
     → 最終判断はあくまでも保護者が行う
  5. 入学前の面談や支援準備へ

※小学校の途中で支援学級への転籍を検討する場合も、基本的には同様の流れです。

自治体によって異なる部分もあるかもしれませんが、おおよそこのような流れで行われています。


5|最終的に判断するのは保護者です

就学相談や判定会議で、「支援学級が望ましい」という意見が出たとしても、
そのまま自動的に在籍が決まるわけではありません。

最終的に決めるのは、あくまでも保護者の意思です。

とはいえ、教育委員会や学校側は、お子さんにとって無理のない選択肢を提案しています。

その提案を受けて、ぜひご家庭でゆっくりと考えてみてください。


6|まとめ:安心して学べる場所を一緒に見つけること

私が特別支援学級を勧める時、いつも大切にしているのは、

「この子が安心して、学び・生活できる場所はどこだろう?」

という視点です。

勉強が得意かどうかだけではなく、
「この場所なら、気持ちが落ち着いて過ごせる」「分からないことを素直に聞ける」
そう思える環境かどうかが、支援学級を考える上での大きな鍵になります。


最後に…

「うちの子、対象なのかな……」

そう思ったときは、ぜひ一度、担任や特別支援コーディネーターに相談してみてください。

困っているのは本人かもしれません。でも、そのことに気づいてあげられるのは、保護者の皆さんです。

今回の記事が、進学や学級選びに迷われている方の力になれたら嬉しいです。

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!


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