「WISC検査で“ワーキングメモリが低かった”と言われたけど、これってどういうこと?」
「記憶力が悪いってこと?」
「授業についていけないのでは?」
そんな不安を感じる保護者の方も多いと思います。
この記事では、現役の特別支援学級担任の立場から、「ワーキングメモリが低い」とはどういうことか、そして学校や家庭でできる支援の工夫をわかりやすく解説します。
ワーキングメモリ(WMI)とは?
ワーキングメモリとは、
「見たり聞いたりした情報を一時的に頭の中に留めて、同時に処理する力」のことです。
短期記憶と似ていますが、「覚える+使う」を同時に行う点が特徴です。
たとえば次のような場面で使われます。
- 数字や言葉を聞いて一時的に覚える
- 覚えた内容を使って計算や判断をする
- 先生の指示を聞いて、その通りに行動する
つまり、“頭の中のメモ帳”のような働きをしている力です。
一方で、「自転車の乗り方」「自分の名前」「旅行の思い出」など、長く覚えている記憶は長期記憶にあたります。
「昔のことは覚えているのに、さっきのことを忘れてしまう」という場合は、ワーキングメモリが関係している可能性があります。
ワーキングメモリが低い子によく見られる特徴
学校で関わる中でよく見られる特徴を、学習・コミュニケーション・生活の3つに分けて整理します。
① 学習面
- 算数の文章題で、数字は覚えているけれど条件を忘れてしまう
- 授業中に説明を聞いても、板書を写すうちに内容を忘れてしまう
→「書く→見る→書く」を何度も繰り返す - 漢字の書き順や英単語のスペルを覚えにくい
② コミュニケーション面
- 相手の話を最後まで聞いていられず、途中で内容が抜ける
- 会話が複雑になると混乱してしまう
- 複数人で話していると情報を整理できず話についていけない
③ 生活面
- 「ランドセルから連絡帳を出して、ファイルからプリントも出してね」と複数の指示をまとめて受けると混乱する
- 「牛乳と卵を買ってきて」と言われてもどちらかを忘れてしまう
- 遊びのルールを覚えるのに時間がかかる
- 忘れ物が多い
こうした姿は「うっかり」「注意が足りない」と誤解されがちですが、
実は “頭の中のメモ帳の容量” が小さいために起きていることも多いのです。
学校や家庭でできる支援の工夫
現場で私が意識している支援のコツを紹介します。
家庭でもすぐに取り入れられる内容ばかりです。
① 指示は「短く・区切って」伝える
「ノートを出して、日付を書いて、算数のプリントをはさむ」ではなく、
「まずノートを出そう」→できたら「日付を書こう」と一つずつ区切って伝えるようにします。
② 視覚的な補助を活用する
- 黒板やメモに手順を箇条書きする
- やることリストをホワイトボードに貼る
- イラストや絵カードで順序を見せる
耳からの情報だけでなく、目からも理解を助ける工夫が有効です。
③ 復唱や確認を取り入れる
- 「今日の宿題は何だった?」と子どもに言わせて確認する
- 「次は何をするんだっけ?」と問い返して理解をチェックする
自分の言葉で整理させることで、記憶がより定着します。
④ スモールステップで練習する
- 計算問題は短い数列から始めて、少しずつ長くする
- 指示の数を「1つ→2つ→3つ」と段階的に増やす
「できた!」という小さな成功体験を積み重ねることが大切です。
⑤ 道具をうまく使う
- チェックリストや付箋、タイマー
- スマホ、タブレットのリマインダー
- ホワイトボード
「覚えておく」よりも「覚えなくてもいい仕組みをつくる」ことが安心につながります。
支援学級でもよく使う方法で、子どもたちの生活が安定しやすくなります。
ワーキングメモリは鍛えられる?
これは研究によって見解は分かれているようです。
「もとの容量は変わらない」という意見もあれば、「トレーニングで向上する」という報告もあります。
ただ、言えることは、刺激を受けることで脳の働きは活発になるということです。
私は、子どもの脳は刺激次第で成長すると考えています。
授業でも、ワーキングメモリを使う活動を取り入れています。
そして何より大切なのは、 「覚え方を覚える」ことです。
語呂合わせ、歌、体を動かしながらの暗記など、短期記憶を長期記憶に移す工夫を繰り返し練習します。
自分に合った覚え方を身につけることで、将来も役立つ力になります。
まとめ
- ワーキングメモリが低いとは、「集中力がない」や「怠けている」ではなく、 “頭のメモ帳が小さい” という特性のこと
- 情報を整理しやすいように支援することが大切
- 「覚えやすくする工夫」や「負担を減らす環境づくり」で力を発揮しやすくなる
WISCの結果は、お子さんを評価するものではなく、支援のヒントです。
ワーキングメモリが低いという特性を理解し、家庭と学校が連携してサポートしていくことで、子どもは安心して力を伸ばしていけます。
いっしょに子どものための環境を模索していきましょう!
WISCについての詳しい内容はこちらを参考にしてみてください♪
