WISC検査の結果を見て、「言語理解の数値が低かったけれど、学校生活ではどんなことが苦手になるの?」「家庭や学校ではどんな支援をすればいいの?」と悩む保護者の方もいるのではないでしょうか。
WISCの「言語理解」は、子どもが言葉を使って物事を理解したり、自分の考えを説明したりする力を見る指標の一つです。
ただし、言語理解が低い=国語が苦手、話すことが苦手という単純なものではありません。
大切なのは、検査結果を「できないことを探すため」に使うのではなく、「どんな方法なら理解しやすいのか」を考える材料として使うことです。
この記事では、特別支援学級の担任として子どもたちと関わってきた経験をもとに、言語理解が低い場合に見られやすい苦手さと、学校や家庭でできる具体的な支援について解説します。
WISCの「言語理解」とは?
WISCの言語理解は、簡単に言えば、言葉を使って考えたり、言葉の意味を理解したりする力に関係する指標です。
例えば、
- 言葉の意味を理解する
- 言葉を使って説明する
- 共通点を考える
- 質問の意味を理解する
- 自分の考えを言葉で表現する
といった力が関係しています。
そのため、言語理解の数値が低い場合には、学校生活のさまざまな場面で「先生の話を理解する」「文章を読んで意味を理解する」「自分の考えを説明する」といった活動に難しさが見られることがあります。
ただし、WISCの数値だけで、その子の能力や学校生活での様子を決めつけることはできません。
実際の子どもの様子と合わせて総合的に考えることが大切です。
言語理解が低い子どもに見られやすい「苦手なこと」
① 長い説明を聞いて理解する
一度にたくさんのことを説明されると、途中から何をすればよいのか分からなくなることがあります。
例えば、
「教科書を出して、○ページを開いて、問題を解いたら、終わった人は丸付けをして、その後にプリントをやってください。」
という指示です。
大人からすると簡単な指示でも、複数の情報を言葉だけで処理することが難しい子にとってはかなりの負担になります。
効果的な支援
指示を一度に全部伝えるのではなく、短く区切って伝えます。
「教科書を出しましょう。」
「つぎに○ページを開きましょう。」
「問題を解きましょう。」
というように、一つずつ伝える方法が有効です。
さらに、黒板やカードなどに手順を書いて番号などをふっておくと、「次に何をすればいいのか」を自分で確認できます。
② 曖昧な言葉を理解する
「ちゃんとして」
「きちんと片付けて」
「もう少し頑張って」
「静かにしてください」
など、曖昧な表現を使うことありますよね。
しかし、言語理解に弱さのある子どもにとって、このような言葉は「具体的に何をすればいいの?」と想像しづらく、分かりにくい場合があります。
効果的な支援
曖昧な言葉を、具体的な行動に置き換えて伝えます。
「ちゃんとして」
ではなく、
「鉛筆を筆箱に入れましょう。」
「静かにして」
ではなく、
「話すのをやめて、こっちを向いていね。」
というように伝えます。
「何をすればいいのか」が具体的に分かる言葉を使うことがポイントです。
③ 自分の考えを言葉で説明する
「どうしてそう思ったの?」
「今日、学校で何をしたの?」
「この問題をどうやって解いたの?」
このような質問に対して、答えが分からないわけではないのに、うまく説明できない子がいます。
頭の中では分かっていても、それを整理して言葉にすることに負担を感じているかもしれません。
効果的な支援
いきなり「説明してください」と求めるのではなく、質問を具体的にします。
例えば、
「今日、何があったの?」
ではなく、
「休み時間は何をした?」
「誰と遊んだ?」
「どこで遊んだ?」
というように、質問を分けていきます。
また、
「楽しかった?」
「嫌だった?」
のように選択肢を示すことも有効です。
絵や写真、実物などを見せながら話してもらう方法もあります。
④ 文章問題を理解する
言語理解の弱さは、国語だけではなく、算数などの文章問題にも影響することがあります。
例えば、
「りんごが5個あります。3個もらいました。その後、お母さんが2個食べました。残りはいくつでしょう。」
という問題では、計算自体はできても、文章の意味を理解することに時間がかかる場合があります。
効果的な支援
文章をそのまま理解させようとするのではなく、
文章 → 図 → 式
というように、視覚的な情報に変換します。
例えば、実際に○を書いたり、絵を描いたりしながら、
「最初に5個」
「3個増えた」
「2個減った」と整理します。
言葉だけで理解することが難しいなら、図や具体物を使って理解できるようにすることが大切です。
⑤ 抽象的な言葉を理解する
「思いやり」
「責任」
「協力」
「相手の気持ちを考える」
といった言葉は、目に見えるものではありません。
言語理解に弱さがある子どもにとって、こうした抽象的な言葉は理解しにくいことがあります。
効果的な支援
抽象的な言葉を、その子が経験した具体的な場面に置き換えます。
例えば、
「思いやりを持ちましょう。」
だけではなく、
「友達が困っていたら、『大丈夫?』と声をかける。」
「順番を譲ってあげる。」
など、実際の行動で示します。
抽象的な言葉を、具体的な行動に変換することがポイントです。
言語理解が低い子への支援で大切な5つのポイント
ここまで紹介した内容をまとめると、次の5つが特に重要です。
① 指示を短くする
長い説明を一度に伝えず、必要な情報を短く区切ります。
② 具体的な言葉を使う
「ちゃんと」「しっかり」などの曖昧な表現を減らし、「何をするのか」を具体的に伝えます。
③ 視覚的な情報を使う
写真、絵、図、文字、実物などを使って、「目で見て分かる」環境を作ります。
④ 実際の経験と結び付ける
抽象的な説明だけではなく、実際の場面や経験を例にして説明します。
⑤ できないことではなく「分かる方法」を探す
これが最も大切です。
例えば、
「先生の話を聞いても分からない」
と考えるのではなく、
「話だけでは分かりにくいけれど、絵を見せると分かる」
「一度に3つ言われると難しいけれど、1つずつならできる」
というように、その子が理解しやすい方法を探します。
「言語理解が低い=言葉が苦手」と決めつけない
WISCの結果を見ると、どうしても「数値」に目が行ってしまいますよね。
しかし、WISCは子どものすべての能力を数字で表すことはできません。
例えば、言語理解が低くても、
- 見本を見ればすぐにできる
- 絵や図を見ると理解できる
- 実際に体験するとよく分かる
- 興味のあることについては豊富な知識がある
- 自分の得意な分野ではよく話す
という子どももいます。
だからこそ、WISCの結果を見るときには、
「この子は何が苦手なのか?」
だけではなく、
「この子は、どんな方法なら理解しやすいのか?」
という視点を持つことが大切です。
まとめ
WISCの言語理解が低い場合、日常生活では「長い説明を理解する」「曖昧な言葉を理解する」「自分の考えを言葉で説明する」「文章問題を理解する」などに難しさが見られることがあります。
そのような場合には、
短く伝える・具体的に伝える・視覚化する・実際の経験と結び付ける
といった支援が有効です。
そして何より大切なのは、「言葉で分からない子」と決めつけてしまわないこと。
言葉だけでは分かりにくくても、図や写真、実物、見本などを使えば理解できることがあります。
WISCの検査結果は、子どもの「できないこと」を決めるためのものではありません。
「この子にとって、分かりやすい伝え方は何だろう?」と考えるためのヒントとして活用することが、支援につながっていきます。
検査結果を学校と共有し、その子に合った支援の仕方を一緒に見つけていけると、
より効果的にその子の成長へと繋げることができるはずです!
一緒にがんばりましょう!