WISC検査の結果を見て、「知覚推理の数値が低かったけれど、学校生活ではどんなことに困るの?」「どんな支援をすればいいの?」と疑問に思う保護者の方もいるのではないでしょうか。
WISCの「知覚推理」は、目で見た情報をもとに、物事の特徴や関係を考えたり、問題を解決したりする力に関係する指標です。
ただし、知覚推理が低いからといって、単純に「図形が苦手」「算数が苦手」というわけではありません。
この記事では、特別支援学級の担任として子どもたちと関わってきた経験をもとに、知覚推理が低い場合に見られやすい苦手さと、学校や家庭でできる具体的な支援について解説します。
WISCの「知覚推理」とは?
知覚推理は、簡単に言えば、目で見た情報を整理して、特徴や関係を考える力です。
例えば、
- 図形の特徴を捉える
- 見本を見ながら形を組み立てる
- 部分から全体をイメージする
- 物の位置や関係を捉える
- 見た情報から答えを考える
- ルールやパターンを見つける
といった力が関係しています。
そのため、知覚推理に弱さがある場合、学校生活では「図や見本を見て理解する」「図形を扱う」「板書を見ながら作業する」といった場面で難しさが見られることがあります。
ただし、WISCの数値だけで、その子の能力や学校生活での様子を決めつけることはできません。
実際の子どもの様子と合わせて考えることが大切です。
知覚推理が低い子どもに見られやすい「苦手なこと」
① 見本を見ながら同じものを作る
図工や工作、算数の図形などでは、「見本を見て同じように作る」という活動があります。
一見すると簡単そうですが、見本のどこを見ればいいのか分からなかったり、部分と全体の関係を捉えることが難しかったりする子どもがいます。
例えば、折り紙で「この形に折りましょう」と見本を示しても、どこをどのように折ればいいのか分からず、手が止まってしまうことがあります。
効果的な支援
最初から完成した見本だけを見せるのではなく、途中の手順を一つずつ示すことが有効です。
「完成した形」
だけではなく、
①ここを折る
②次にここを折る
③最後に形を整える
というように、途中の状態を見せます。
実演や動画で手順を観ながら行うとできることが増えるかもしれません。
② 図形や位置関係を捉える
算数の図形問題では、
- どの辺が同じ長さなのか
- どこを動かせば同じ形になるのか
- 図形を回転させるとどうなるのか
- 物がどこにあるのか
など、目で見た情報を整理する必要があります。
知覚推理に弱さがある子どもは、このような問題で時間がかかることがあります。
効果的な支援
頭の中だけで考えさせるのではなく、実際に動かしたり触ったりできる教材を使うことが有効です。
例えば、図形を紙で切り取って実際に動かしてみたり、積み木を使って形を作ったりします。
「頭の中でイメージして」
と求めるだけではなく、
「実際に動かして確かめてみよう」
とすることで、理解しやすくなることがあります。
③ 板書を見ながらノートに写す
学校では、黒板を見てノートに書き写す活動が多くあります。
しかし、黒板の情報を見て、必要な部分を探し、自分のノートに同じように書くという作業には、さまざまな力が必要です。
そのため、知覚推理だけでなく、注意力や処理速度など他の要因も関係しますが、板書のどこを見ればいいのか分からず時間がかかることがあります。
効果的な支援
- 色や囲みで重要な部分を示してもらう
- 写す量を減らす
- 必要な部分をプリントで用意してもらう
といった工夫が有効です。
「全部写しましょう」ではなく、「ここだけ写しましょう」と範囲を明確にすることも大切です。
また、担任の先生に相談して、板書をタブレットで撮影する許可を得てもいいかもしれません。
その子に合ったやり方を先生と相談しながら見つけてみてください。
④ 全体のイメージをつかむ
例えば、パズルをするときに、完成した絵を見ながら「このピースはどこに入るのだろう?」と考える必要があります。
知覚推理に弱さがある子どもは、部分的には見えていても、それを全体と結びつけることが難しい場合があります。
学校でも、
「この図は何を表しているの?」
「この文章に合う絵はどれ?」
など、全体をイメージすることが必要な場面で難しさが出ることがあります。
効果的な支援
最初から全体をイメージさせるのではなく、部分から全体へという順番に確認するようにします。
「まず、この部分を見てみよう。」
↓
「次に、こちらを見てみよう。」
↓
「2つを合わせると、どうなるかな?」
というように、情報を整理していきます。
⑤ 図や写真だけの説明では分かりにくい
「ここを見てください。」
「このようにやります。」
と、図や写真だけを見せて説明すると、すぐに理解できる子もいれば、何を見ればいいのか分からない子もいます。
知覚推理に弱さがある場合、視覚情報が得意とは限らないことに注意が必要です。
「図を見せれば必ず分かる」と考えるのではなく、言葉や実演なども組み合わせます。
効果的な支援
例えば、
言葉で説明する
+
実際にやって見せる
+
完成した見本を見せる
というように、複数の方法を組み合わせます。
その子にとって「一番分かりやすい方法」を探すことが大切です。
知覚推理が低い子への支援で大切な5つのポイント
ここまで紹介した内容をまとめると、次の5つがポイントです。
① 完成形だけでなく「途中」を見せる
② 実際に動かしたり触ったりする
③ 情報を整理して提示する
④ 「どこを見ればいいか」を明確にする
⑤ その子に合った方法を探す
「知覚推理が低い=図形が苦手」とは限らない
WISCの結果を見ると、
「知覚推理が低いから、図形が苦手なんだろうな」
と考えてしまうことがあるかもしれません。
しかし、それだけで子どもの得意・不得意を決めることはできません。
例えば、
- 実際に触ってみると理解できる
- 実演されると分かる
- 一つずつ手順を示すとできる
- 時間をかければ自分で解決できる
- 興味のある活動では高い集中力を発揮する
ということもあります。
だからこそ、WISCの結果を見るときには、
「この子は何が苦手なのか?」
だけではなく、
「この子は、どんな提示の仕方なら理解しやすいのか?」
という視点を持つことが大切です。
まとめ
WISCの知覚推理が低い場合、学校生活では「見本を見て同じように作る」「図形や位置関係を理解する」「板書を見ながら作業する」「部分と全体の関係を捉える」といった場面で難しさが見られることがあります。
そのような場合には、
手順を分ける・実演する・具体物を使う・注目する場所を明確にする
といった支援が有効です。
そして大切なのは、「知覚推理が低いから、〇〇が苦手」と決めつけないことです。
検査結果を子どもの可能性を狭めるために使うのではなく、
「どうすれば、この子は分かりやすいのか?」
を考えるためのヒントとして活用していきましょう。
家庭だけで悩まず、学校の先生や専門の方と一緒に考えることで、
子どもへよりよい効果が期待できますよ!